ドル円が100円のときに、ターゲットが1割カットの材料発注案件があるとするじゃないですか。そうすると、この例では為替取引で1億を9000万円にすることが求められるわけですね。
もちろん、あくまでできそうかできなそうか?を上に報告するという話なので、ぼくには「実際の為替取引によって1割カットしなければならない」という負荷がかかるわけではありません。
あくまで「チーム内での相談」の体で話は進みます。ただ、当たり前ですが、実質はぼくのパフォーマンスはこの案件の分析の精度なんですね。
今回は、ぼくの組織人としてのタスクの話です。
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指示じゃなくて空気を読ませる
組織のラインとしては、実際の為替取引に関しては「指示」「通達」の類のものはいっさいありません。
これは、良くも悪くも「為替の値動きは水物」という共通認識があるからですね。
ただ、一方で、一企業としては為替取引による収益の上下動は、絶対に看過できないものなんです。
これは、上場企業のBSやPLや見てもらえればわかるとおもいます。
トップダウンで管理するには不確実性が高すぎるという側面がある一方、収益構造に占める為替の影響はかなり大きいんですね。
なので、組織としてはこういうかたちになるわけです。
「指示はしないけど、できうる限り利益を上乗せしたいなぁ」 というのが、いわば社内の「雰囲気」です。
つまりは、ぼくの所属するチームはそういう空気を読んで出来上がったチームってことですよね。
この「利益を上乗せしたい」という点もポイントです。
一昔前までは、ココが「為替で損はしたくない」というだけの方向性でした。
案件の多くは、社長決裁まで行きます。
分析をはじめるダカール
それで、1割カットの話です。
この話が上から降りてきたときに、だいたいぼくはとりあえず資料をざっと見て、即、「いやー、1割は絶対無理ですね!」と言っときます。笑
まぁ、このへんは担当の発言としては、常套手段なんですけどね。
で、そう言いつつ分析を開始するんです。
実際は、どうなのか?というところですよね。
これは材料費を削減する話なので、実際は1億と言っても、ベンダーごとに分けることができます。
たとえばこんな感じですよね。
このケースだと、ぼくはまず為替予約分を差っ引きます。
為替予約っていうのは、あらかじめ決まった日取りで為替取引をするということを予約しておくことです。
つまり、為替リスクを固定する処置のことですね。
これは社内規定で適用される額面が決まっています。
ここではそれが2000万円以上ということにしましょうか。
そうすると、3000万円の材料費はぼくのタスクの範囲外ということになります。
エクセルに向かい合う
実務の話をはじめます。
この案件においては、「1億円を、為替取引可能な期間内で、1割カットできそうか?」の分析がぼくのタスクです。
まずやるのは、「この案件においては、ドル円がいくらになれば、1割カットできたことになるか?(=A)」の分析です。
次にやることとしては、「7000万円は、今の為替相場環境から描くことができるシナリオにおいて、米ドル換算すると、いくらになることが見込まれるか?(=B)」を考えることです。
Aは理想、Bは予想 ですね。
このへんもくわしく書くといろいろあるのですが、この記事では先を急ぐことにします。
話は、Aのほうです。
Aの話は、まず、先に書いた通り為替予約分を無視して考えるので、7000万円分だけを1割カットして計算します。
だいたい目星をつけると、「@85 くらいかなー」 と思えるので、7000万円に0.85を掛けて、最後に3000万を足すと、8950万に。
「ちょうどじゃん」ということでとりあえず手を止めます。
ここから先は為替マンとしては自由に経験を生かしながら分析をすすめます。
ぼくだったら一応5%カットの場合も、数字を出しておきます。
7000万円に0.95を掛けて、最後に3000万を足すと、9650万。
これだとさすがに上司は「そんなもんにしかならないかー?」という感じでしょう。
でも、相場が95円くらいにしかならなそうであればしょうがないです。
そうして、そんなこんなで、相場分析を開始します。
ここからがぼくの真骨頂なわけです。
為替相場環境を分析
報告の仕方の目途はついているので、あとは相場をフラットに見ていくだけです。
はたしてドル円は、為替取引可能な期間内で、どのくらい下落してくれそうなのか?
この分析のノウハウについては、Dakarの手法にゆずります。
分析の結果、@90 くらいになりそうだという感触を得たとしますよね。
この仮説を導いたならば、あとは再度計算をしていきます。
つまり、Bがいくらなのか?を出すわけです。
7000万円に0.9を掛けて、最後に3000万を足すと、9300万ですね。
つまり、ぼくはこのタスクは、「1割カットは不可。但し、5%ほどであれば、相場状況によってはコスト削減可。」という最終報告をするかたちになります。
5%だと9500万なので、自分の分析結果と比較すると、200万分はポケットになります。
営業マンではないので、ネゴではなく、あくまで「相場次第です」というニュアンスを付加させるために、常に報告書には「相場状況によっては」の文言がつきます。
これは決して単なる理論武装を施した書類というわけではなく、自社のバイヤーがベンダーとネゴをする際の、大切な資料になるんですね。
どうでしょうか?
ちょっとでもイメージを持っていただけましたでしょうか?
まとめ
たとえば、こういう分析を元に、為替予約をしておく範囲をひろげることになった、という案件も過去にありました。
そういう案件が、実際にシナリオどおりに為替相場が変動して、「為替予約をしておいてよかった」ということになれば、やはりぼくとしては素直にうれしいです。
逆に為替相場がおもっていた方向に行かなくても、為替取引はほぼすべて社長決裁なので、為替取引担当の責任にはなりません。
このへんがときどき「甘い」と言われてしまうところでもあるんですが、そこは毎日、ぼくが戦っているフィールドということになります。
今後も、完全に為替取引部門の権限だけで決済されていくことはないでしょう。
やはりかたちとしては、社長決裁が一番無難だからです。
でも、現在の金融工学をもってすれば、まだまだ為替のスペシャリストができることってあるとおもうんですよね。
組織って流動的です。
外国為替チームの信用が社内で今後もっと増していけば、よりやりがいのあるタスクが舞い降りてくるんじゃないかとおもっています。
たとえば取引する案件の規模とタイミングですよね。
一定金額以下の為替取引については、リアルタイムで上下動するチャートに向き合って決裁をすることを認められているわけですが、その金額レベルをもっと上げてもらう、とか。
ぼくは常に、静かに職場でこんなことを考えつづけてます。
Dakar
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